ジャック・リヴェットは1928年3月1日、ジャンヌ・ダルクやフロベールで知られるルーアンの生まれ。カルチエ・ラタンのシネクラブやアンリ・ラングロワの初期のシネマテークで浴びるほどに映画を見て、やがてロメールやトリュフォー、ゴダール、シャブロルらがアンドレ・バザンのもとに結集する<カイエ・デュ・シネマ>誌で、誰よりも鋭い峻厳な批評を書いた。50年代末にトリュフォー、シャブロル、ゴダールが監督として華々しいデビューを飾って<ヌーヴェル・ヴァーグ>が世界の脚光をあびるが、リヴェットはかれらよりも先に長編第1作『パリはわれらのもの』の撮影に入りながら、完成までに3年かかった。資金不足が理由とされているが、純粋で透徹した批評眼が自らに容易な作品を作らせないのだ。63〜65年に<カイエ・デュ・シネマ>誌の編集長として、従来の枠を大胆に破って、ロッセリーニ、ラング、ルノワール、ホークス、ヒッチコックらの長大なインタヴューや作家論を組んで作家主義を決定的に打ち出した。代表作として、第1作『パリはわれらのもの』、上映禁止処分でフランス全国の騒ぎとなった「修道女」、上映時間が4時間超の『狂気の愛』や12時間半の『アウト・ワン』、「セリーヌとジュリーは舟でゆく」、「美しき諍い女」、2部作の「ジャンヌ」ほか数多いが、フランスでもほとんど見られていない作品も多い。「恋ごころ」は、「セリーヌとジュリーは舟でゆく」につながるコメディー・トーンで、構想の出発は敬愛するルノワールの「黄金の馬車」から、演劇を堂々と登場させての、リヴェットのひとつの集大成的な作品だ。


©フランス映画社 本サイトの内容を無断で複製したり転載することはできません。 E-Mail:info@bowjapan.com