



リスボン発、南の保養地アルガルヴ方面への長距離列車。 “妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・” 見知らぬ婦人と隣あわせたマカリオは、自分に起きた衝撃的な事件を語る。
マカリオは会計士。叔父フランシスコが経営するリスボンの高級洋品店で、店の2階で仕事を始めた。ベランダごしに、通りの向かいの家に白いカーテンの窓が見える。宵を告げる鐘が鳴る頃、窓辺にブロンドの少女が。手には中国風の扇。その過激なまでの美しさにマカリオは恋をした。“扇にではなく、彼女に恋したのでしょう?”と列車の婦人。
2週間後の昼間、少女が母親とともに店を訪れてくるのを見て、マカリオは店への階段を駆け下り、叔父フランシスコに厳しく叱責される。
食事どきに、叔父は、高級ハンカチーフがなくなったと言う。
数日後の朝、通りを歩く男が向かいの家の母親に親しげに挨拶しているのが見える。
男は友人だ。紹介してもらえる!とマカリオは歓喜して小躍り。
その友人を訪ねて会員制のサロンへ。19世紀の文豪エサ・デ・ケイロス(この映画の原作の作者)を記念してサラザール独裁政権当時の大物政治家が作った文学サロンだ。友人に母親の名はヴィラサ夫人、良家の母娘だと聞いて安心し、マカリオは紹介をたのみこむ。
土曜の夜、公証人の豪邸での上流層の集い。ハープでドビュッシーの<アラベスク>が奏でられている。少女ルイザはそこに美しくいた。
名優シントラがペソアの詩<羊の番人>を朗誦する。
・・・ 世界の不幸は 善意であれ悪意であれ 他人を思うことから生じる
魂と天と地 それだけで充分だ
それ以上を望めば 魂や天や地を失い 不幸になる ・・・
別室でのカードゲームに、マカリオとルイザが加わる。ルイザに配られたチップが不思議なはずみで行方不明になる。
ヴィラサ夫人宅での親しい友人の集い。マカリオは招かれて、人々が去った後、夫人にルイザへの思いを打ち明け、翌朝、叔父フランシスコに結婚のゆるしを乞う。しかしフランシスコは激しく反対し、結婚したいなら今すぐ出て行けと、彼をクビにする。
クビになり、貧しい借り部屋に暮らしはじめたマカリオ。職を探すが、叔父の知り合いには次々断られて窮する。ルイザに、今は求婚できなくなったが、大きな取引があると嘘をついてなだめ、夜の河辺をさまよう。
街で、派手なカンカン帽の旧知の男から、貿易商がカーボヴェルデに行って働く男を探していると聞いて、マカリオは即座に受ける。アフリカ西端の、むかしポルトガルの植民地だった島々の国だ。仕事は過酷だろう。
マカリオは、ルイザに別れを惜しみながら出発し、彼女への愛に焦がれながら懸命に働き、一財産を築いてリスボンに帰還する。
マカリオはヴィラサ夫人を訪問し、晴れて結婚の許しを得る。
“よかったこと”と列車の夫人は祝福。しかし、“それがそうでもなかったんです”・・・。
