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フォーエヴァー・モーツアルト
 ゴダールの90年代以後の35ミリ劇場用長編映画は、「ヌーヴェルヴァーグ」(90)、「新ドイツ零年」(91)、「ゴダールの決別」(92-93)、「JLG/自画像」(93-95)、「フォーエヴァー・モーツアルト」(96)、「愛の世紀」(01)の6作品あり、その間、ビデオによる全8章の大作「映画史」(88-98)が並走しているが、「フォーエヴァー・モーツアルト」は、なかでも最も明るさと快活さが特徴で、光と響きで疾走する映画だ。製作時期は「映画史」3ABを発表し4Aを制作した頃に重なっている。世界プレミアは96年ヴェネチア国際映画祭。

 物語は演劇、戦争、映画、そして音楽の4つの流れで構成される。
 映画監督ヴィッキー・ヴィタリスはマルローの《希望》を舞台化する《希求》の準備中に、<男爵>と呼ばれるプロデューサーに「宿命のボレロ」という映画の監督を頼まれる。一方、ヴィッキーの娘カミーユは、従弟たちとともに、戦火のサラエヴォに戯曲を上演しにいくという。父ヴィッキーもやむなく、サラエヴォへの旅に向かう。

 出演者には、この作品を最後に世を去ったヴィッキー・メシカをはじめ、ほとんどなじみの顔がいないが、それでいて発端からゴダールならではの超スピードの展開が始まる。「ヌーヴェルヴァーグ」や『フランス映画の2x50年』のゴダール作品でウエイトレス役で登場して少しおなじみのセシル・レゲールをはじめ、全員がすばらしい存在感で生き生きと登場している。いっぽうスタッフはそうそうたるつわものぞろいだ。撮影のクリストフ・ポロックは「新ドイツ零年」(91)以来の、サウンドのフランソワ・ミュジーは「フレディ・ビュアシュへの手紙」(81)以来の、ゴダールの映画作品ヴィデオ作品を通じての重要なスタッフ。製作はフランス・スイス合作で、アラン・サルドはフランス映画界で最も精力的な活動を誇るプロデューサーで「勝手に逃げろ/人生」(80)以来ゴダール作品のほとんどを製作しており、スイス側のヴァルトブルガー女史は「右側に気をつけろ」(87)以来ゴダールの信頼を得ていてアンゲロプロスの「こうのとり、たちずさんで」やカラックスの「ポーラX」もサポートしている名プロデューサーだ。音楽は、モーツアルトはもちろん、ベートーヴェンも登場し、ECMの音源によるケティル・ビヨルンスタの“THE SEA”からのパッセージが鮮やかにつかわれている。

 “ジョン・フォード!”の叫び声とともに「映画史」4Aの章で登場した美しい一瞬の全体が浜辺の撮影シーンであらわれるのをはじめ、どのシーンも、凄まじい美しさの映像力でぐいぐい進展する。「ウイークエンド」が60年代ヌーヴェル・ヴァーグ時代に別れを告げ、劇映画に封印を刻した黙示録とすれば、ゴダールの20世紀最後の劇映画「フォーエヴァー・モーツアルト」は戦争の世紀に対する黙示録と言えるだろう。


ウィークエンド JLG/自画像

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