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1919年頃、ギリシャのテサロニキ湾岸の荒れた草野に、東をめざして歩きつづけている人々がいる。ロシアのオデッサに移民として行き、革命の勃発と赤軍のオデッサ入城で、命からがら逃げてきた逆難民のギリシャ人たちだ。頑強な40才がらみの男スピロスが、一行の長だ。病弱な妻ダナエ、5才の息子アレクシス、そして、アレクシスの手を求めて放さない幼い少女がいる。名前はエレニ。オデッサで両親を失なった孤児だった。
およそ10年後。スピロスたちが築いた<ニューオデッサ>の村には、家々がたちならび、子供たちの学校もあれば、教会もある。その村に、一艘の小舟で少女エレニが戻ってくる。妊娠して、ひそかにテサロニキで出産して、生まれたふたごを裕福な商人夫妻の養子にしてもらった、そうしたすべてのはからいを、スピロスの妻ダナエがすませて、スピロスの姉カッサンドラにさえ一言もはさませなかった。なにより恐ろしいのは、ふたごの父親がアレクシスだということ。それをスピロスが知ったら、その場でエレニを殺すだろう・・・。その夜、スピロスが弟たちとオデッサの日々を偲んで歌う間、アレクシスは庭の闇のなかでエレニに言う。
「いつかふたりで、河のはじまりを探しに行こう」。
数年後、妻ダナエがなくなり、スピロスは成長したエレニを娶ろうとする。姉カッサンドラや弟たちの反対を押してスピロスは結婚式を強行したが、エレニは花嫁姿のまま逃げ出して、アレクシスとふたりで村を後にする。
救ってくれたのは、ヴァイオリン奏きのニコスだ。アレクシスがアコーデオンの名手であることをニコスは知っていた。ニコスはふたりをテサロニキにともない、市民劇場に案内する。なんとそこは、22年のスミルナ敗戦で逃げてきた難民たちが住みついて、桟敷席ひとつひとつが難民たちの家になっている劇場アパートだった。劇場に住まいをえてほっとするが、ここはテサロニキ、エレニはすぐにも二人の子供たちに会いたい。音楽院に行き、ピアノを連弾しているヤニスとヨルゴスをみつめるが、陰からのぞき見るだけで、挨拶さえできないのが、エレニには、身を切られるようにつらい。
テサロニキの港には別な難民グループの集落があり、洗ったシーツが無数に広場にひるがえるさまから<白布の丘>と呼ばれていた。その坂上には、クラリネット吹き兼マネージャーのジシスがいろんなバンドマンを集める<音楽の溜まり場>がある。誰もいない溜まり場に、音楽が聞こえてくる。アレクシスをバンドに誘おうとするニコスの粋なはからいだった。アコーデオンの腕が認められれば、いつかはアメリカに行けるかもしれない。アメリカは人々の夢だ。
そんな夜、劇場にスピロスが酔って入ってくる。花嫁に逃げられた恥をどうしてくれると花婿姿でわめくスピロス。ニコスは二人を<白布の丘>に逃がす。二人は一軒のあばら家に住むが、スピロスに追われている幻想から逃れられない。
ニコスはバンドを組んで巡業に出ると、アレクシスを誘う。しかし時代の暗い影が田舎町にも及んで、得意先の酒場は閉店。自由に音楽をやりたい聞きたいというだけで、左翼とみなされてしまう時代の波だ。工場の労働者と親しいニコスと、警察と怪しい関係のジシスの仲が険悪になっていく。ジシスはアレクシスが安酒場でのバンド演奏にいや気がさしているのを見抜いて、アメリカ行きを計画している大物マルコスにひきあわせる。自分が置き去りにされると恐れたエレニは花嫁姿で港に行き、来ない船を待ち続ける。
やがて二人は子供たちと対面するが、ヤニスもヨルゴスもうちとけてくれない。しかし雨の日の<音楽の溜まり場>でようやくうちとける子供たち。ママと呼ばれたエレニは嬉しさに涙ぐむ。
工場労働者が人民戦線への参加とゼネストの決議集会を開いて弾圧された日の夜、ニコスは、ジシスにけしかけられて、祭を開こう!と闇のなかの群衆に呼びかける。
歌って踊る祭のさなか、アレクシスとエレニの前にスピロスがあらわれる・・・。 |
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